厳寒の北国で育つ絶品マンゴー「摩周湖の夕日」のひみつ
- 釧路・阿寒・川湯・根室
- 最終更新日:2019年2月27日
凍てついた空気に、わずかに含まれていた水分もダイヤモンドダストとなって光にきらめく…そんな風景が広がる、道東の弟子屈(てしかが)町の冬。
この町で、極寒の中、南国フルーツの代名詞でもあるマンゴーが栽培されていると聞き、秘密を探るべくお邪魔してきました。
1.摩周湖のふもと、弟子屈町でマンゴー?
弟子屈(てしかが)町は、道東の中心に位置し、日本一の透明度をほこる摩周湖を擁することで全国的にも有名です。
町の面積のおよそ3分の2が「阿寒摩周国立公園」に含まれており、四季折々の大自然が楽しめるとあって、毎年多くの観光客で賑わう観光の町でもあります。
(写真:雲海の摩周湖)
摩周湖ばかりが注目を集めがちでもありますが、実はここ、弟子屈町には日本最大のカルデラ湖、屈斜路湖もその全域が含まれています。
美しく雄大であるというだけでなく、カルデラの生み出す大地のパワーは温泉の恵みとなって、町内全域でさまざまな泉質のお湯を楽しむことも出来るのです。
(写真:冬の屈斜路湖)
(写真:硫黄山とシロツツジ)
弟子屈町の人口は、およそ7,500人。
真夏の暑さは30℃を超え、厳寒期の気温は-30℃近くまで下がることもあり、一年の気温差が実に60℃近くにも達するという厳しい自然環境ではありますが、豊かな自然の恵みや、美しい環境が何よりの魅力です。
そんな弟子屈町で、近年マンゴーの栽培が始まったと聞き、「一体どうやって極寒の地でマンゴーを作っているの?」と、その秘密を知るために栽培を手がける「ファームピープル」さんの農場へお邪魔してきました。
2.温泉熱を使った栽培
案内してくださったのは、農場の管理を手がける村田陽平さん。
挨拶もそこそこに、まずは立ち並ぶハウスの中へご案内いただきました。
現在、農園内にはこのようなハウスが30棟、整然と並んでいます。
さすが南国果実を育てているだけあって、ビニールは2重になっています。ビニールをめくって中に足を踏み入れると…。
中はほんのり甘いマンゴーの香り、そしてわさわさと目に鮮やかな緑がいっぱいに飛び込んできました。
外は氷点下ですが、ハウスの中は20℃~30℃ととても暖かく、北国であることを忘れてしまいそう。
この暖かさの秘密は、温泉熱。豊富に湧き出す温泉を使って、ハウスの中を暖かく保っているのです。
(写真:地下に埋設されたタンクに温泉が貯まっています)
源泉の温度は82~85℃。一度タンクに貯められたお湯は、30棟のハウスそれぞれに送られます。
温泉のお湯は、各棟に供えられたこれらの機械を使って暖房に使用され、ハウス内の温度を自動で管理しています。
どうしても温度が足りない時や不測の事態に備え、敷地内には「保険」用に重油のタンクも設置され、重油暖房のシステムも整っているのですが、今シーズンはまだ一度も使用していないとのこと。
「もし全ての棟を100%重油暖房でまかなったとしたら、暖房費だけで年間3億円くらいかかるんですよ!」と村田さん。
そんなことになれば、地球環境に優しくないだけでなく、コスト的にもまったく成り立たなくなってしまいますから、北国でのマンゴー栽培は、豊富な温泉あってこそなんですね。
3.摩周湖の夕日、美味しさのヒミツ
しかし、豊富な温泉と、温度を自動的に管理してくれるシステム、そして温かなハウスが30棟あっても、北国でのマンゴー栽培が難しいことには変わりありません。
2011年にオープンした農園ですが、「最初の2年はほとんど手探りでしたし、気温だって毎年傾向が違いますから、今までにおよそありとあらゆる種類の失敗をしました」という村田さん。
積み重ねてきた試行錯誤、それが今の美味しいマンゴーに結実しているのですね。
ハウス1棟に植えられたマンゴーの木は、およそ50本。
ここでは試験的に地植えをした1棟を除き、すべて「ポット栽培」を行っています。
マンゴーを植えているポットは、柔らかく、水を透過し、なおかつ丈夫という特殊な素材。
ポット栽培を行うことで、水分量の調整や、樹高の制限も容易にできるのだと言います。
また、木を傷めずに移動できるというメリットもあるのだそう。
現在、農園全体で育てられている木はおよそ1,600本。
これまでの収穫最高記録は、2万個ということですが、樹齢があがり、栽培技術もさらに確立されていけば、いずれ4万~5万個の収穫も見込めるとのこと。
しかしながら、一体なぜこの北国でマンゴーを育てるのか…マンゴーならば九州や沖縄でもっと楽に育てられるのではないか…そんな風に思われる方も多いはず。
その答えは、なんとここの寒さにあるのです。
「マンゴーというのは、2年に3回収穫することが出来るんです。ただ花の開花には20℃前後の気温が必要で、マンゴー栽培本場の九州や沖縄では、夏は高温になるため花を咲かせられない。ここでは夏も冷涼なため、夏にも花を咲かせることが出来るのです。8月に花を咲かせたマンゴーの木は、12月~1月ころに収穫期を迎えるんですよ」
冬のこの時期、国内で収穫されるマンゴーは北海道産のものだけ。
そして現在、北海道内でこの時期にこれほどのマンゴーを収穫しているのは、ここファームピープルの農園だけ。
とても貴重な冬の国産マンゴーなのです。
写真はまだ小さなマンゴーの花。
成長すると、1株におよそ3,000もの小さな花が咲きますが、1つを残し、残りは剪定するのだそう。
選ばれたたった1つの花が、やがて大きく成長してマンゴーとなります。
取材にお邪魔したのは12月、この時期に咲いた花は、4~5月頃に収穫期を迎えます。
もちろん、花が咲いた後も、ひとつひとつに心を配り、成長に応じて吊るしたり、ネットをかけたり、銀のお皿を取り付けて色づきを促したりと、一日たりとも目を離すことができません。
「栽培を始める前は、温度を保って水だけあげていれば育つのかと思っていました。実際はまったく違いましたね!目が離せないので、今では農場に寝泊りしていてどこにも出かけられません」
と村田さん。
本当に手間がかかるだけに、無事に収穫までこぎつけた時の喜びはひとしおですね。
ノウハウのない状態から始まった北国でのマンゴー作りですが、ここだけのオリジナルな栽培法のひとつを教えていただきました。
それは、肥料に北海道産のコンブを与えること。
海草のミネラルが土に溶け出すことで、収穫されたマンゴーの味が劇的に変化したそうです。
農園のマンゴーは「アップルマンゴー」とも呼ばれるアーウィン種のもの。完熟すると自然に落下し、ネットに収まります。
さまざまな苦難を乗り越えて熟したマンゴーの実は、『摩周湖の夕日』の商品名で、全国各地へ発送されます。
名前のとおり輝くように赤く、惚れ惚れするような美しさですね。
4.どこで食べられるの?
幾多の苦難を乗り越えてようやく収穫されたマンゴー。
弟子屈町内では、道の駅・摩周温泉の直売所で、箱入りのものを購入することができます。
運よく、この箱入りマンゴーを入手された方のために、オススメの食べ方をお聞きしました。
やはりこのままカットして食べるのが一番ですが、ヨーグルトなどに混ぜて食べるのもいいですよ、とのこと。
また食べる時にはぜひ「常温」で食べてみてくださいと仰っていました。
冷蔵庫などで冷やしすぎると、本来の甘みが味わえないため、冷やすとしても食べる直前に軽く周りを冷やす程度がいいとのことでした。
マンゴーのカットの仕方は箱に図入りの説明が同封されていますから、初めての方でも安心です。
さて『摩周湖の夕日』を実際に頂いてみると、驚くほどクリーミーでなめらか。
また、マンゴー特有の苦味やえぐみが全くなくさっぱりしているので、マンゴーが苦手な方にもオススメです。
弟子屈町内では、このほかにマンゴーと使った加工品も楽しむことができます。
まずはこちら、川湯温泉駅前のカフェ『森のホール』さん。
こだわりの材料で丁寧に作られた絶品スイーツが楽しめるとあって、毎日多くのお客様で賑わうお店ですが、作ったそばから売り切れるという人気のケーキが「マンゴータルト」です。
さくさくとしたタルト生地、とろけるようなバニラのクリーム、そしてたっぷりと重ねられた香り高いマンゴー、まさに至極の逸品です。
マンゴーの出回る時期にしか作れない期間限定のケーキ、確実に食べたい方はお店にご予約の上、お出かけくださいね。
森のホール
住 所:北海道川上郡弟子屈町川湯駅前2丁目
電 話:015-483-2906
営業時間:9:30~18:00(冬季は17時まで)
※森ごはんは、11:00~16:00
定 休 日:火曜、第2と第4の月曜定休
箱入りのマンゴーを購入できるのは、『道の駅・摩周温泉直売所』
直売所の店舗では、マンゴージュースも販売されています。
香りは高く、あっさりした味わいのマンゴージュース。摩周湖の夕日を100%使用していますから、とても贅沢な一杯です。こちらは年間を通じて販売されていますので、道の駅にお立ち寄りの際はぜひお試しくださいね。
道の駅・摩周温泉(直売所)
住 所:北海道川上郡弟子屈町湯の島3丁目5番5
電 話:015-482-2288
営業時間:8:00~18:00(11月~4月は、9:00~17:00)
定 休 日:無休(12/30~31、1/2~3は休み)
5.お取り寄せについて
貴重な弟子屈産マンゴー『摩周湖の夕日』ですが、弟子屈町へ「ふるさと納税」していただいた方には返礼品として発送もしています。
http://www.town.teshikaga.hokkaido.jp/05machizukuri/15tyousei/furusatonouzei_tokuten.html
弟子屈産マンゴーの収穫時期は、今のところ12~1月、4~5月、そして数は少ないですが10月頃と、年3回。マンゴーの出回る時期を見計らって、ふるさと納税のサイトをチェックしてみてくださいね。
また、全国の有名デパートに高級マンゴーとして出荷もされています。
お近くにフルーツを扱うお店がありましたら、出会うことがあるかもしれません。
おわりに
今回は、冬に北国で収穫される貴重なマンゴー、「摩周湖の夕日」について、ご紹介しました。
豊かな自然と温泉が魅力の弟子屈町。ぜひゆっくりと時間をとって、雄大な自然を楽しみにお出かけください。
町内には摩周温泉や屈斜路温泉、そして川湯温泉など名湯もそろっています。
美味しいマンゴーを楽しんで、大自然と温泉でリラックス!心にも身体にも優しいひとときをお過ごしくださいね。
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