「運河の宿 おたる ふる川」宿泊体験記~小樽の運河沿いで味わう、おもてなしと粋~
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- 小樽・ルスツ・ニセコ
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- 最終更新日:2025年5月12日
もくじ
ノスタルジー漂う、小樽運河のほとりで
北海道開拓の玄関口として発展してきた小樽。その歴史の面影を今に伝えているのが、小樽運河です。大正12年に完成したこの運河は、海を埋め立てて造られたため、なだらかなカーブを描きながら街中を静かに流れています。運河沿いには石造りの倉庫や歴史ある建物が並び、夕暮れには63基のガス灯がふんわりと灯って、どこか懐かしく幻想的な景色が広がります。
今回滞在した「運河の宿 おたる ふる川」は、そんな運河のすぐそばにたたずむ一軒。玄関をくぐると、大正ロマンの趣が漂う空間が広がり、どこか懐かしい気持ちに包まれます。スタッフの方々の心のこもったお迎えに、旅の疲れもふっとほぐれていくような、優しい時間が流れていました。
歩きはじめた我が子と過ごす、思い出の和室
今回選んだのは、1日2室限定の市街地を望む檜風呂付きの和室。窓の外には小樽のまちが広がり、室内は大正ロマンの趣をたたえた、どこか懐かしさを感じる落ち着いた空間です。ちょうど歩きはじめたばかりの息子が安心して過ごせるよう、広々とした和室を選んだのですが、柔らかな畳の上を嬉しそうに歩き回る姿が、旅の時間をより思い出深いものにしてくれました。
滞在の中ではチェックインからチェックアウトまで、スタッフの皆さんがさりげなく心を配ってくださり、小さな息子にもやさしく接してくれたことがとても印象に残りました。何気ない会話の中に感じる安心感が、旅の始まりを穏やかに包み込んでくれる、温かいひとときでした。
大人なひとときを過ごす、粋なウェルカムラウンジ
お部屋でひと息ついたあとは、1階の「光ラウンジ」へ足を運びました。ランプの柔らかな灯りとステンドグラスの彩りが美しい空間では、英国タンノイ製スピーカーから流れるクラシックに耳を澄ませながら、読書を楽しんだり、好みのドリンクを片手にゆったりとした時間を過ごせます。
珈琲サーバーには、小樽ブレンドと名付けられたコーヒーが用意され、日中にはナイアガラの白ワイン、夜にはニッカウヰスキーや赤ワインも。ひとときごとに表情を変えるラウンジで、大人のくつろぎを静かに味わえるのも、この宿ならではの楽しみです。
ひと味違う、遊び心が光る北海道の旬を味わう夜
「運河の宿 おたる ふる川」では、夕食が2つのグレードから選べます。今回は、スタンダードの“月コース『季節の美味会席』”を堪能。料理長が旬の食材に心を込めて仕上げた品々が、一皿ずつ丁寧に運ばれてきます。中でも、出汁とともに供された季節の四種盛りのお造りは見た目にも華やかで、繊細ながら旨みのあるお刺身に感動。また、なば菜のアヒージョ寄せなど、和と洋のエッセンスが融合した創作料理にも遊び心が光ります。
食事の途中で登場する“数量限定の追加メニュー”。海鮮が主流ながら、運が良ければ肉料理に出会えることもあります。今回は、希少な道産牛ミスジのステーキをオーダー。しなやかな弾力と、噛むたびにあふれる旨みに圧倒される一皿でした。最後は、あさりとひじきの炊込みご飯と、合鴨つみれ汁でホッと一息つきます。お腹いっぱいだったので、デザートのハスカップのプリンはお部屋でいただきました。
定山渓温泉にも引けを取らない、小樽を代表する天然温泉
運河の宿おたるふる川の、もうひとつの魅力——それは、宿自体が自家源泉を持っていること。 その泉質は、名湯として知られる定山渓温泉にも引けを取らないほどの実力派。湯冷めしにくく、肌をしっとりと包むナトリウム塩化物泉は、ひとたび浸かれば体の芯までぽかぽかに温まります。
大浴場は、小樽軟石を使った趣ある造りで、まるで「蔵」の中にいるかのような落ち着いた雰囲気。全30室というこぢんまりとした宿だからこそ、大浴場をひとりじめできることもめずらしくありません。
そして驚いたのが、部屋の檜風呂にまで源泉が引かれていること。蛇口や洗面台からも温泉水が出てくるなんて、なんとも贅沢。飲用にはペットボトルの水が別に用意されており、湯量の豊かさを物語っています。木のやわらかな肌ざわりは、子どもにも心地よく、朝も夜も、何度でも入りたくなるお風呂でした。
ノスタルジックな情緒を醸す、夜の小樽散策
歴史情緒あふれる町・小樽。その象徴ともいえる小樽運河ですが、実はそのエリアは思いのほかコンパクト。見どころは、浅草橋から中央橋までの短い区間にぎゅっと凝縮されています。日中のにぎわいとは対照的に、夜の運河はひっそりと静まり返り、幻想的な雰囲気に包まれます。
水面にはガス灯の明かりがゆらぎ、運河沿いの石造倉庫を利用した店舗の窓からも、やさしい灯りがこぼれ落ちます。光と水が織りなす、どこか異国を思わせるような風景が、夜の散歩を特別にしてくれました。
北海道の恵みを丸ごと味わう、心温まる手作り朝食
朝の楽しみといえば、やはり朝食。運河の宿 おたる ふる川では、「北海道産の食材」と「手作り」にこだわった、約40種類の朝食ビュッフェが用意されています。地元の恵みを生かした惣菜は、どれも丁寧に仕上げられており、品数の多さに加えて一品一品の工夫が光ります。なかでも、濃厚な味わいのグラタンや、香ばしく焼き上げられたクロワッサンは、ぜひ味わいたい逸品です。
お米や牛乳をはじめ、食材から“北海道らしさ”が感じられる料理の数々に、朝から感動が広がります。フルーツや蒸し野菜など、1歳の息子も安心して楽しめるメニューが揃っており、家族みんなで心温まる朝のひとときを過ごせました。レモンクリームを添えて味わう自家製スコーンも、忘れられない美味しさでした。
チェックインからアウトまで至福の時間を過ごせる「運河の宿おたるふる川」。宿泊前後には荷物も預かってくれ、小樽観光の拠点にイチオシのお宿です。小樽へ旅行をする際には、ぜひチェックしてみてください。
- 住所
- 北海道小樽市色内1丁目2番15号
- TEL
- 0134-29-2345
- イン/アウト
- 15:00/12:00
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日本深掘りサイクリスト・フォトグラファー 土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部文化史学科・英文学科卒。サラリーマンの傍、自転車旅&登山スタイルで、日本各地を駆け巡るトラベルライター。 四季折々の日本を五感で捉え、発信しています。
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