北海道の尾瀬と呼ばれる秘境-雨竜沼湿原の魅力とは?
- 旭川・層雲峡
- 最終更新日:2019年6月11日
道内でひそかにトレッキングのスポットとして人気を集めています。
でも、どんな魅力があるのか?アクセスは?不明な点も多いのではないでしょうか。
そこで今回は秘境・雨竜沼湿原をご紹介。北海道の秘境を見て感じたくなることは間違いないでしょう。
さらに付け加えると、雨竜沼湿原のベストシーズンはまさにこれからなのです。
もくじ
1 雨竜沼湿原とは
北海道の尾瀬ともいわれる雨竜沼湿原は、空知地方雨竜町に位置します。
ルートとしては日本海側の留萌・増毛からのアプローチも可能です。しかし、暑寒別岳を経由するルートは総行程10時間以上といわれるハードなものです。
長年にわたり、コケ類が秋から冬にかけても腐敗せず、そのまま堆積した泥炭地。この中に、池塘(ちとう)といわれる沼が点在します。その数は700個をも超えるといわれ、複雑な景観を訪れる人々に提供しています。
その全体は野生本来の静かさを保ちながらも広大であり雄大。筆舌尽くしがたいものがあると登山者はいいます。
大小さまざまな形の池塘はその水面に花を浮かべ、また、万年雪に彩られた暑寒別の山々を映します。
緑の野を多彩な高山植物が豪奢に飾り立てている。涅槃と例える訪問者もいるほど。
尾瀬よりは圧倒的に来訪者が少なく、あなただけの秘境の旅を満喫できます。
2 雨竜沼湿原の春・夏・秋
2-1 春の雨竜沼湿原
春の遅い北海道の中でもさらに高原湿地ともいえる雨竜沼湿原の目覚めは遅く、6月の中旬。
日本海側からの雪が多く、暖冬といわれる年でもあまり差がありません。山開き後、しばらくの間は残雪の中を進むことになります。
しかし、山開きは同時に高原植物の開花の時期を告げる鐘でもあります。
山開きの時期には池塘からろうそくのように屹立するミズバショウ。
本州南部からは梅雨明け、海開きの声を聞く時期でも雨竜沼ではひっそりとミズバショウが咲いている。
日本列島の神秘を感じるかもしれません。
ほかにもオオバタチツボスミレやヒメシャクナゲが小さいながらも自己主張強い際立つ色を風に揺らします。
残雪の中に少しずつ色が広がる風情を楽しんでください。
2-2 夏の雨竜沼湿原
7月から本格的に花の季節が始まります。
立ち昇る朝霧はミルク色の広がりで池塘に覆い、その切れ目からは満開の花々。
特に絶景と称されるのはエゾカンゾウの何とも表現しがたいヤマブキ色。
ユリに似た細長い太陽が地面いっぱいに広がる風景は、天上界、天国、涅槃と様々に登山者からは表現されます。
その隣や合間にはやや色薄くシナノキンバイ。
ヒオウギアヤメは紫色の花でコントラストを作り出します。
小さいながらもツルコケモモが赤い花を光らせています。
雨竜沼固有種であるウリュウコウホネ。蓮の一種、午前2時には花を引かせることから名付けられたヒツジグサ。
百花繚乱といえるほど豊富な植物相がそのあふれんばかりの生命の力強さで迫ってくる感動の光景なのです。
それは人が手を加えない野生の姿。秘境であることに価値があるのではなく、この7月下旬にかけての美しさにこそ雨竜沼湿原の真の価値はあるといえるでしょう。
自然界はさまざまな奇跡を生み出しますが、その一つはこの雨竜沼湿原なのです。
2-3 秋の雨竜沼湿原
雨竜沼湿原の秋の訪れは早く、8月の末はもう早秋といえますし、10月上旬には湿原は閉ざされ次の年の6月までの長い眠りにつきます。
その短い秋を謳歌するかのように、9月初旬まで花は咲き続けます。
花の季節のラストを彩るのはサワギキョウやエゾリンドウのノーブルな紫色。
最後まで植物は手を抜きません。
花が終わると、湿原地帯は徐々に枯野へと変貌していきます。
枯野とはいっても水の豊富な雨竜沼湿原ですので、からからに乾いてというよりはしっとりとした趣、かなり低くなってきた太陽に照らされ、黄金に湿地帯は輝きます。
光の加減や植生のせいか一部はにおい立つような薄紅になっている部分も。
過行く季節を感じて、趣を感じるには大変良い雰囲気。暑寒別のほうに目を移せば、徐々に薄まっていく緑。
一部は色づき始めているのかもしれません。花という近景に目を奪われる夏と比べより遠くに視線がひきつけられる秋もおすすめです。
3 周辺施設‐ルートガイド
3-1 雨竜沼ゲートパーク
雨竜沼の起点は雨竜沼ゲートパーク。
宿泊施設である暑寒別岳登山口の南暑寒荘。ある意味ここが文明といえる場所の最果て。
ここからはコンビニはもちろん自動販売機の一台さえありません。
ここで最終的な準備を行って、秘境へと立ち向かいます。
否応なくテンションは上がります。宿泊施設といえど寝具類はすべて持ち込みです。
往復で12時間必要な本格的な暑寒別岳登山を志向しない限り、宿泊することはないと思われます。
3-2 管理事務所
基本のルールとして、雨竜沼湿原は登山届が必要です。
駐車場の横にある管理事務所で提出します。
こちらでは、留意事項などの説明もあり、アドバイスも聞けます。
入山者、来訪者の安全を第一に考えての助言は心強さを与えてくれます。
3-3 第一吊り橋~白竜の滝~第2吊り橋
ややなだらかな道を抜けると吊り橋が見えてきます。ここが本当の入り口、やや道は峻嶮になります。
しかし、景観スポットの一つ白竜の滝(白糸の滝)も見られます。
雨竜沼は山に囲まれ、棚状になっている湿地帯ですのでいたるまでにはいくつもの川と上り坂を覚悟しなくてはいけません。
3-4 雨竜沼湿原
湿原の入り口には湿原に外来生物を持ち込まないようにとの配慮から洗い場が設けられています。
必ず靴の泥を落としてから湿原に踏み込みましょう。
全長3キロを超える木道が張り巡らされ雄大な景色が現前に広がります。
まさに、北海道の尾瀬という異名に恥じない素晴らしさ。言葉を失います。
少し高い展望台からの情景は壮大かつ緻密な自然の造形を一望のもとに目の前に広げてくれるでしょう。
必要最小限にしか人の手が加えられていないワイルドな情景は心を震わせ、いつまでも色あせることない映像を目に焼き付けることになるはずです。
思い出とひとくくりにするには空の青さ緑の深さ咲き乱れる花々。
この天井の楽園のごとき湿地帯のインパクトは強力すぎると思います。
4 アクセス
ゲートパークまでは公の交通機関がありません。
JRで滝川まで、その後は北海道中央バスにて雨竜町へ。市街からはタクシーを利用することになります。
レンタカー・自家用車の場合は、深川留萌自動車道深川西ICから、道道深川雨竜線で雨竜町にさらに雨竜市街から 登山口までは約26km。
ゲートパークには駐車場が70台分用意されています。
ここからは、登山道を約90分ペンケペタン川に沿って進みます。
最盛期でも人影はさほど多くありません。まさに、秘境です。
5 注意事項
5-1主役は野生動植物
Photo by Flickr:Uryunuma bog / Christoph Rupprecht
雨竜沼湿原の主役は野生動物です。
われわれ人間はあくまでも、この湿地にとってのフォリナーにすぎません。
来訪はその前提で行われています。
国定公園の一部であり、さらにはラムサール条約で指定される野鳥の楽園です。
ヒグマの生息数も多く。それは自然の豊かさを示すものではあるのですが、まさにクマ出没注意を地でいっている土地であることは十分にご理解ください。
木道以外への立ち入りは厳に戒められています。
5-2 山の天候は変わりやすい
管理事務所の存在からわかるように基本的には登山と同じ心構えと服装で考えてください。
途中の道は下草が生えてかなりワイルドな道になっている部分もあります。
服装としてはパンツスタイルとトレッキングシューズは確実に必要です。
また、ゲートパーク以降はトイレもありませんので、携帯用のトイレを携行することが推奨されています。
5-3 アブとブヨ(ブユ)に注意
虫よけは必要です。ブヨはきれいな水辺に発生する小さな虫ですが、刺されるとかなり後々まで悲惨なこと。
人によっては1か月以上苦しんだり、大きく腫れてそのまま慢性湿疹のような状態になることもあります。
アブも大型です。刺されるとかなり痛みますので虫対策は十分に行いましょう。
おわりに
南雨竜湿原の魅力が少しでも伝わりましたでしょうか。
かなり、ハードルが高そうな湿地。お手軽感は全くないワイルドさ。しかし、自然本来の姿はそうしものではないでしょうか。
ハードルが高ければ、高いほど味わう喜びも大きいはずなのです。
空知の北西端の天上界は誰もを受け入れるわけではないかもしれません。
しかし、手を伸ばさなければその天上界にたどり着くこともできない世界ですし、その期待を決して裏切ることのない素晴らしさを持っています。
秘境における野生に帰る体験。この夏是非お勧めします。
雨竜沼湿原についての情報
なお、雨竜沼湿原へ実際に行かれる場合は、必ず現地状況をご確認くださいませ。
詳しい情報は、雨竜町観光協会websiteまで。
※2019年の入山開始は7月3日(水)の予定です。現在は閉鎖中です。
※例年の入山可能時期は、6月中下旬から10月上中旬ごろとなります。
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